応神天皇(五)新羅の王 来朝~神功皇后の出自

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その昔、新羅の国王に子がありました。名はアメノヒホコ(天之日矛)といいました。この人が日本に来朝した理由は、新羅国 に一つの沼がありました。名を阿具奴摩といいました。

この沼のほとりに、一人の卑しい女が昼寝していました。また一人の卑しい男が通りかかりました。その時、太陽の光が、虹の ように女の陰部をパァーーと指し示しました。

「ど、どういうことじゃこれは!?」

見ていた男はビックリします。女はスヤスヤと眠ったままです。気付きもしません。

「なんとも奇怪なことがあるものじゃ。
よし、ちょっとあの女を観察してみるか」

男は毎日、女を観察することにしました。来る日も来る日も、例の沼のほとりに出て、男は女を観察します。そのうちに、男は 女の異変に気がつきました。腹がだんだんふくれてきたのです。しかもただの妊娠とは思えません。毎日目に見えてすごい速さで ふくれているのです。

「お前さん、その腹は」

「ああ、はい。これは…あの、私夫はいないんですけど、
なぜか、みごもっちゃったんです」

女はほとほと困り果てた様子で言いました。
ほどなくして生まれてきたのは、人間の子ではありませんでした。
赤い玉でした。

「どうしようかしら。こんなもの。
私にはとても育てられないわ」

その頃はもう男は毎日沼のほとりに通って女とは顔なじみであり、いろいろと相談事にも乗ってやっていました。

「お困りのようだね。なんならその玉、俺にくれないか」

「えっ!もらってくれるんですか。じゃあ、あげます」

こうして男は女から玉をもらいうけ、いつも包んで腰につけていました。

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さて男は谷間に田を持っていました。そこで小作人たちを働かせていました。ある日、男は一頭の牛に小作人たちの昼飯を背負 わせて、「そろそろ腹が減っているだろう」と、谷へくだっていきました。

そこへ、お忍びで通りかかったのが新羅王の子、アメノヒホコです。わずかなお供の者とともに下々の生活を見に来ていたアメ ノヒホコは、牛の背中にたくさんの食料を負わせて通りかかった男を目にして、言います。

「ぬ。お前その牛をどうする気だ。ははあ。殺して食べようというつもりだな。
牛殺しはたいへんな罪だぞ。おい、こやつを捕らえよ。牢屋に入れてしまえ」

「ちょ…なんですあなた方は。牛殺しなんてとんでもない。
私はただ小作人たちに昼飯を運ぼうとしてきたんです」

「だまれっ、ごまかすな」

話になりません。アメノヒホコはどうしても男を捕らえようとします。「こいつめ」役人の手が男の手をひっつかまえました。 まるで会話が通じません。このままでは罪人にされてしまいます。その時、男はピーンと思いつきました。

「太子さま、この玉をどうぞ。たいそう高価なものです」

「ん?なんだ玉、…ほう、なかなか良いもののようだな。
おい、そのほうら、離してやれ。牛殺しの罪など、勘違いであったようだ」

こうして男は許され、アメノヒホコは玉を手に入れました。

アメノヒホコは館に玉を持ち帰り、床の間に置いたところ、
いかにもその玉は美しく、キラキラと光を放っています。

「うーん。すばらしい。いくら見ていても飽きないわい」

その時、

ビカーーッ

「ぐわっ!!」

ものすごい光が差したかと思うと、光の中に、ポワーーと
乙女の姿が浮かび上がりました。

「お、お前は…」

「私は貴方の妻となるべき女です。私を妻としてください」

その乙女はアメノヒホコが今まで見たどの女よりも美しく、
肌が透き通るようでした。
「わかった。今すぐ、結婚しよう」
アメノヒホコは、半ば無意識に返事していました。

こうして夫婦生活がはじまります。

しかし、アメノヒホコはもともと傲慢な性格であり、
最初こそ素敵な妻を迎えて大切にしていましたが、
すぐに態度がぞんざいになっていきました。

「あなた、どうですか今夜のお料理は」

「ん、まー、ふつう」

「あなた、見てください。髪型を変えてみました」

「あっそう」

こんな感じでしたから、妻もだんだんイライラしてきました。

「もう我慢の限界です。私はあなたの妻となるべき女では
ありませんでした。祖先の国に行くことにします」

こうして妻はひそかに船に乗って日本へわたり、
難波に留まりました。これがアカルヒメノカミです。

「ああ!妻よ!遠くへ行ってしまうなんて!
お前がいないと、やはり生きてはいけない。
失ってはじめてわかる。妻のありがたさよ」

男は船に乗って、妻の後を追って、海をわたります。
難波にいよいよ着こうという時、浪速の渡の神が
浪を逆巻かせ、雨を降らせ風を吹かせるので、難波に入ることができませんでした。

「ああ…妻のことは諦めるしかないのか…。
仕方ない。新羅へ帰ろう」

そう言って瀬戸内海から関門海峡をぐるりとまわり、
日本海側に出て但馬国に船を休めます。しかしそのまま
但馬国にとどまって、現地の娘と結ばれ、たくさんの子供が生まれ、
子がまた子を産み、アメノヒホコから数えて6代目に生まれたのが
オキナガタラシヒメ。すなわちあの、神功皇后です。

また、アメノヒホコが新羅から日本に持ち込んだ宝は玉津宝《たまつたから》といわれ、玉を連ねたものが二組、また、浪振る ひれ、浪切るひれ、風振るひれ、風切るひれ、また、鏡が二枚。あわせて八つの宝で、伊豆志《いずし 出石》神社に奉納されて います。

また、この八つの宝は宝でありながら、同時に神でもあり、「伊豆志《いずし》の八柱《やつはしら》の大神《おおがみ》」と 呼ばれました。

≫つづき【応神天皇(六) 秋山・春山兄弟の争い】

解説:左大臣光永

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