応神天皇(五)新羅の王 来朝~神功皇后の出自

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さて、アメノヒホコの来日に伴って日本にわたってきたイヅシ大神の娘に、伊豆志袁登売神《イヅシオトメノカミ》という美しい女神がいらっしゃいました。

多くの神々が、この女神に求婚しましたが、イヅシオトメの守りは堅く、みんなフラれてしまいました。

さてここに二柱の神がありました。

兄の名を秋山之下氷壮夫《あきやまのしたひおとこ》、弟の名を春山之霞壮夫《はるやまのかすみおとこ》といいました。

秋山・春山兄弟といったところですね。

ある時、兄の秋山が弟の春山に言いました。

「私はイヅシオトメに求婚したのだが、ふられてしまった。
お前だったら、イヅシオトメを手に入れることができるかね」

弟春山が言います。

「兄さん、たやすいことです。まったく兄さんは
女性の扱いというものを知らないんだから。
私にかかれば、イヅシオトメなんて、ちょろいです。
ちゃちゃっと、手に入れてみせます」

「ぐぬぬ…自身満々だのう。じゃあ賭けようじゃないか。
もしお前がイヅシオトメを手に入れられたら、
私は上下の着物を抜いで、身長をはかって、それと同じかさの
酒をかめに入れて、お前に与えよう。また山と川の産物を
ことごとくお前にやろう」

「へーっ、へーっ、そりゃあ面白いや。でも、
そんな賭けが成立するんですかね。私が勝つって
決まってるのに」

「ふん。口ばかり達者な奴だ」

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兄をこらしめる

春山は、母にこの賭けのことを話します。

「まったく兄上もバカですよ。
負けるとわかっている賭けを仕掛けてくるなんて」

「まあまあ、そんなお前、兄弟で賭け事なんて
感心しないよ。でもそんな素敵な娘さんなら
嫁に来てもらいたいわねえ」

母は一晩のうちに衣と袴と足袋と沓を織り、
また弓矢を作って、わが子春山に持たせます。

春山は母が編んでくれた衣と袴を着て足袋と沓を履いて
また弓矢を持って、イヅシオトメの家に出かけていきます。

すると、歩いていく道すがら、
その衣服も、弓矢も、すべて藤の花の姿に変わりました。

「これはキレイだ。ステキだ」

そこで春山は、弓矢をイヅシオトメの家の厠の表にひっかけてきました。

厠に来たイヅシオトメは、厠の入り口に藤の花がからまった
弓がかけてあるのを見て、「あら、何かしら」と手に取ります。

「まあキレイな藤の花。
部屋に飾っておきましょう」

家に戻っていこうとするイヅシオトメ。その後ろから、
春山が後をつけます。カララッ…戸が開けられたところで、
そのまま中に入っていき、ガバッとイヅシオトメを抱きしめます。

「きゃ、なんです、あなた」
「私は、春山の神だ。乙女よ、
我と結婚しろ」
「そんな、強引な…」

などとやり取りがありましたが、ついに結婚しました。
そして子供が一人生まれました。

「どうです兄さん。私はイヅシオトメを手に入れましたよ。
賭けは私の勝ちです。さあ、約束を果たしてください。
たしか上下の衣を脱いで、身長をはかって、それと同じかさの
酒をかめに入れて、私にくれるんでしたよね。
また山と川の産物をことごとく私にくれるんでしたね」

「くっ…手に入れたといっても、
こんな強引なやり方では、誰だってできるじゃないか。
こんなのは、認めん」

兄は約束を果たしませんでした。

弟は、母に訴えます。

「母上、兄がひどいんですよ。約束を果たそうとしません」

「まあ、ひどい兄だこと」

母は兄秋山を呼び出して、言います。

「神のやり方は、人のやり方とは違うのです。
背後からしのびよって、強引に手に入れた。人間ならば
これは犯罪です。でも人のやり方と神のやり方は違います。
昔から、私たちの先祖は、こうやってきたのです。
あなたのお父さんも、それは強引だったわ。ぽ。思い出してきちゃった」

頬を赤らめる母に、兄秋山は

「あの…母上、それで、何がおっしゃりたいのでしょう?」

「だからね。ちゃんと懸けの代価を、
払ってあげなさい」

「いやです!」

「どうしても嫌か」

「母上には関係の無いことです」

「そうか。じゃあ母にも考えがあります」

母は、その兄を恨んで、すぐにその地の伊豆志河《いづしのかわ》の川中の島に生えている一節竹を取って、目の粗い籠を編ん で、その川の石を塩に混ぜて、竹の葉に包みます。そして、弟に、兄に対する呪いの言葉を言わせました。

「この竹の葉が青く茂るように、この竹が萎えるように、
青くなったり、萎えたりせよ。
また、この石が沈むように、病に沈め」

このように呪いの言葉を言わせて、竹の葉を煙の上がる竃の上に置きました。それから八年、兄は呪いによって体が干上がって 、病に沈みました。

「ああ、こんな、あんまりです。
私が悪かったです。母上、助けてください」

「そうかい。わかればいいんだよ」

兄が謝ってくると、母はすぐに呪いの品々を兄に返させました。すると、体はもとのように健康になりました。

これが神々の間で賭けを行う「誓約《うけい》」の始まりと言われます。

≫つづき【仁徳天皇(一) 竃の煙】

解説:左大臣光永

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