仁徳天皇(三) メドリへの求婚

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女鳥王《めどりのみこ》への求婚

天皇の恋の遍歴は、さらに続きます。

天皇は速総別王《はやぶさわけのみこ》を仲人として、
八田若郎女の実の妹である女鳥王《めどりのみこ》をも、お求めになります。

しかし女鳥王は、腹違いの弟である速総別王に言いました。

「皇后さまは嫉妬深くてややこしいお方じゃ。
だから天皇はいまだに姉上のことも宮中に
お迎えできなくていらっしゃるではないですか。
天皇のもとに上がってもロクなことにならないのは、
目に見えています。それよりも、私はお前の妻になりたいのじゃ。
天皇よりもお前と」

「姉上。ご自分が何をおっしゃっているのか、わかっているのですか」

「わかっています。前々からお前のことを、憎からず思っていました」

こうして女鳥は腹違いの弟である速総別王と結婚してしまいます。
それっきり、速総別王は女鳥のことを天皇に献上しませんでした。

それで、天皇はどうしたのだろうと女鳥の御殿に行き
戸口の敷居のところにお立ちになりました。
その時女鳥は機を織っているところでした。そこへ、天皇のお歌が
聞こえてきます。

女鳥《めどり》の 我が大君《おおきみ》の 織《お》ろす機《はた》
誰《た》が料《たね》ろかも

(わが女鳥の君が織っている機は、
誰の着物になるのだろうねえ)

女鳥の返し、

高行くや 速総別《はやぶさわけ》の 御襲衣料《みおすいがね》

(空高く飛ぶ速総別の衣となります)

天皇は、女鳥のお心を、この歌によりお知りになりました。

(そうか。姉と弟で愛し合っていたのか。
ならば吾がどうこう言うことではない…)

天皇が引き返していかれた後、女鳥の館に愛する弟速総別王が尋ねてきました。
女鳥は弟速総別王に歌います。

雲雀は 天《あめ》に翔《かけ》る 高行《たかゆ》くや
速総別《はやぶさわけ》 雀《さざき》取らさね

(雲雀すら大空に翔けるのです。ましてお前は空高く飛ぶハヤブサ。
ミソサザイごとき敵ではない。やつけてしまえ)

暗に、天皇を討てと弟にけしかけているのです。

「姉上…この歌は、いくらなんでも」
「おほほ…それが私の本心じゃ…」

この歌はすぐに天皇の伝え聞くところとなります。

「憎き女鳥め。弟との仲を認め、おとなしく
退いてやったというのに。謀反を企てるとはふとどきな。
この上は、姉弟もろとも、攻め滅ぼしてくれる」

天皇の軍勢が館を取り囲んだので、女鳥王と速総別王は
館を逃げ出し、倉椅山《くらはしやま》に逃げ込みます。

この時、速総別王が歌って言うことに、

梯立の 倉椅山は 嶮しみと
岩懸きかねて 我が手取らすも

(倉橋山は、けわしいので、
女の身では岩につかまることも難しく、
私の手をお取りになることよ)

ズザアーーーッと、岩肌を滑り落ちそうになる女鳥王を、
速総別王が手を伸ばして、「女鳥」「ハヤブサ」ガシイと
手を掴みます。

また速総別王は歌いました。

梯立の 倉椅山は 嶮しけど
妹と登れば 嶮しくもあらず

(倉椅山は険しいけれど、
愛しい妻と登れば険しいとも思われない)

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そして、さらに倉橋山から逃げて
宇陀の蘇邇(奈良県宇陀市蘇邇村)に到った時、
天皇の軍勢が取り囲み、とうとう二人をズバァ、ぎゃあと
殺害しました。

「ひひひ、こんなことになっちまって、哀れだねえ。
おっ、いいもんを巻いてらあ」

軍勢の将軍の山部大楯連《やまべのおおたてのむらじ》は、
女鳥に仕えていましたが、
女鳥が腕に巻いていた腕飾りを引きちぎって、持って帰り、
自分の妻に与えました。

皇后石之日売《イワノヒメ》の裁き

その後、宮中で酒宴が開かれた時に、
各氏族の妻たちがみな参内しました。

その席に大楯連の妻も、例の女鳥の死体から
はぎとった腕飾りを巻いて参内しました。

皇后石之日売《いわのひめ》は、自ら
御綱柏《みつながしわ》の杯を手に、
各氏族の妻たちにも杯を取らせました。

この時皇后は、大楯連の妻の腕に巻いた
腕飾りに目をお留めになります。

それが女鳥の持ち物であったことを、
皇后はご存知でした。

「退きなさい」
「えっ」
「今すぐ、退きなさい」

それ以上は何もおっしゃらず、皇后は大楯連の妻を
退かせました。

皇后はその夫大楯連を召しだして、おっしゃいました。

「メドリとハヤブサワケの二人は礼を失したがゆえに、
滅ぼされたのです。この事自体に、問題はありません。
しかしお前は女鳥王に仕えていたものではありませんか。
主君が腕に巻いていた飾りものを、まだ肌も温かいうちに
剥ぎ取って己が妻に与えるなど。ええい汚らわしい。
この者を絞め殺せ」

こうして大楯連は死刑にされました。

≫つづき 「仁徳天皇余話」

解説:左大臣光永

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