雄略天皇(五) 三重の釆女
雄略天皇は残虐で極端な行いが多い一方、
とても風流を愛する天皇でもありました。
天皇が長谷の枝がしげった槻の木の下で宴会を開かれた時、
伊勢国の三重の釆女(女官)が大きな盃をささげ持って天皇に差し上げました。
その時、はらりと槻の枝の葉の一枚が舞い落ちて、
盃の上に落ちました。
釆女は盃の上に槻(ケヤキ)の葉が落ちたことに気づかず、そのまま
天皇に献上しようとしました。
「ぬ…」
天皇は目を細め、カーーッと頭に血液がおのぼりになり、
「けしからん」
ドガチャーンと酒類を蹴倒して立ち上がり腰に佩いた十拳の剣をすらりと
抜き、ジャキーーンと釆女にふりかざし、
「そこになおれ」
「あああっ!!」
釆女はがたがた、ぶるぶる振るえながらも、
申し上げました。
「殺さないでください。殺さないでください。
私の歌をきいてください」
「ならば聞こう!」
釆女は、天皇の御世のすばらしいことを長い長い歌に詠み、
歌い上げました。
「ふふふ。なかなか嬉しいことを言ってくれるのう」
天皇はたいそう満足して、釆女を許しました。
皇后も、つづいて天皇も歌を唱和し、宴会はたいそう盛り上がりました。
それで釆女は許されたばかりか、多くの褒美を下されました。
雄略天皇は御年124歳。御陵は河内の多治比(たぢひ)の高鷲にあります。
大阪府羽曳野市の島泉丸山古墳(しまいずみまるやまこふん)が
それだと見られています。
解説:左大臣光永
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