安康天皇(二) マヨワ殲滅戦
安康天皇がその子マヨワノミコ(目弱王)に殺された時、
安康天皇の弟のオオハツセノミコはまだ少年でしたが、
兄が殺されたことを知り、大いに怒ります。
「こんなことがあッ、
こんなことがああああああああッ」
血の気の多いオオハツセノミコは、燃えたぎる
怒りを誰かに訴えないでは、いられませんでした。
そこで、もう一人の兄であるクロヒコノミコ(黒日子王)
のもとに行って、涙ながらに兄を殺された恨みを訴えます。
しかしクロヒコノミコは別段怒る様子もなく、
のらりくらり、へーえ、そうなの、ふうんという
ぬるい感じでした。
そこでオオハツセノミコは激怒します。
「一つには天皇であり、一つには兄弟である方が
殺されたのです!
なのに、驚きもせず、なすべきこともせず。
何なんだ、あんたはああああああああッ!!」
オオハツセノミコはクロヒコノミコの襟首をひっ掴んで
表に引きずり出し、剣を抜いて
ズバアアッ
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁッ」
ズダズダに切り殺しました。
「はあはあはあ…ちっ、この兄の真心の無さにあきれる。
天皇が、兄弟が殺されたというのに…」
血の気の多いオオハツセノミコは、燃えたぎる
怒りを、さらに誰かに訴えないでは、いられませんでした。
そこでオオハツセノミコはもう一人の兄、
シロヒコノミコ(白日子王)のもとに行って、
涙ながらに兄を殺された恨みを訴えます。
しかしシロヒコノミコは別段怒る様子もなく、
のらりくらり、へーえ、そうなの、ふうんという
ぬるい感じでした。
そこでオオハツセノミコは激怒します。
「一つには天皇であり、一つには兄弟である方が
殺されたのです!
なのに、驚きもせず、なすべきこともせず。
何なんだ、あんたはああああああああッ!!」
オオハツセノミコはシロヒコノミコの襟首をひっ掴んで
引っ張っていき、飛鳥の小治田(おはりだ。 甘樫岡の北方)に
行き、穴を掘って立ったままの状態でシロヒコノミコを埋めます。
ざっく、ざっくと土を埋め始めると、
「弟よ!これはッ、何の冗談だッ!!」
「だまれ!!兄弟が殺されたというのに!
兄弟が殺されたというのに!この、情け知らずめが!!
お前には、人の心というものが、無いのかッ!!」
オオハツセノミコははらはらと大粒の涙を流しながら
大きな石も情け容赦なくボンボコ穴の中に放り込むので、
「ぐ、ぐぶううう…」
内臓が圧迫され、腰のところまで埋めたところで、
「ぐぎゃん」
両方の目が飛び出してしまいました。
「敵を殲滅せよ!!」
ワァーー、ワァーー、
オオハツセノミコは軍勢を率いて敵・マヨワノミコの逃げ込んだ
ツブラオミの館に押し寄せます。
「ついに来たか」
ツブラオミは軍勢を整え、オオハツセノミコを迎え撃ちます。
ひゅん、ひゅん、ひゅん、ひゅん
双方が射かける矢は、風に舞う
葦のように乱れ飛びます。
「降伏しろーツブラオミ!お前に、勝ち目は、無いッ!!
マヨワノミコを差し出せい!!」
「臣下である私を、恐れ多くも王子が頼ってこられたのです。
どうして見捨てることなど、できましょう」
「そうか。ならば、こちらも、とことん戦うまで」
ワァーー、ワァーー
オオハツセノミコの軍勢はいよいよ勢いづいて、
圧倒的な戦力でツブラオミの館に押し寄せてきます。
ツブラオミも鎧に身を固め矢を放ち、矢を放ち、
戦いましたが、力も矢も尽きてしまうとマヨワノミコに向かい、
「私はすっかり痛手を負い、矢も尽きてしまいました。
いかがいたしましょう」
マヨワノミコは無念と唇を噛んで、おっしゃいました。
「わかった。今はなすべきことはない。
私を殺せ」
「王子さま…恐れ多いことです」
ずぶうぅぅぅっっ
ツブラオミはマヨワノミコを刺し殺し、
ズバアアアアァァァ
自らの首を斬りました。