オオアナムヂとスサノオ

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「ひゃあ立派な宮殿だなあ。
あそこにスサノオノミコトがいらっしゃるのか」

オオアナムヂは兄弟たちから逃れるため、
オオヤマビコノカミのすすめで根の堅州国へ
スサノオノミコトを訪ねてきました。

スセリビメと結ばれる

すると宮殿の前に、スサノオノミコトの娘であるスセリビメが立っていました。

「なんて素敵な男性かしら」
「なんと美しい女性だ」
互いに目を見合わせます。

なにしろスセリビメは「ぐんぐん進む女」という意味の名前なので、
ぐんぐん進みます。「私たち気が合うみたいですし、結婚しませんか?」
「えっ、いきなり…こんなところでですか」
「どこだっていいじゃないですか。何ならそのへんの物陰ででも…」

こうしてスセリビメとオオアナムヂは結ばれます。

スセリビメは頬を赤らめて、父スサノオの前へ行き、報告します。

「父上、表に素敵な神様がいらしています」
「ん?素敵な神様じゃと?」

スサノオは長い根の国生活ですっかりなまり切った体を
モソモソと動かして外へ出ます。
ヤマタノオロチを退治したころのひきしまった体ではありません。

「あーあ…だいぶ腹も出てきたのう」

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なんて言いながら外に出て、立っている若者を見れば、
スラッと整った顔立ちに、引き締まった体。
一瞬見てスサノオはムカッとしました。

娘のスセリビメを見ると、恥ずかしそうに顔を火照らせています。

(ははーん、そういうことか。この二人もう夫婦の契りをしたな。
ちぇっ、面白くない)

スサノオはスセリビメに言います。

「なにが素敵な神様だ。お前趣味が悪いぞ。あんなもの、
アシハラシコヲノミコトとでも呼んでおけばいいんだ」

地上から来たブ男という意味のひどい名前です。

蛇・ムカデ・蜂の試練

「しかしまあ、はるばる葦原中国から来てくれたんだ。
娘よ、この若者を蛇の岩屋で寝かせてやりなさい」
「ええっ…蛇の岩屋で」

それは文字通り、蛇がうようよしている岩屋です。
ヘビたちはオオアナムヂをしゃーとにらんでいます。
「ひいい!」噛まれたら一たまりも無いです。こんな場所で
寝ろなんて、無茶です。

そこへ、スセリビメがスッとオオアナムヂの肩に布きれを
かけてやります。

「これは蛇のひれというものです。蛇たちがあなたに噛みつくような
ことがあれば、このひれを三度振って追い払ってください」

「ひれ」とは昔の女性が肩からかけていた細長い布のことで、
特別な霊力があると信じられていました。

オオアナムヂは言われたとおり、しゃーっと襲い掛かる蛇へ

「ひいい!!」

と恐れながらもはった、はった、はったと
三度ひれを払うと、蛇はさっきまでの勢いは嘘のように静かになりました。

「ああ助かった」

オオアナムヂは何の心配もなく、岩屋の中でぐっすりと寝て、
疲れを取ることができました。

次の日はムカデがひしめき蜂がぶんぶん飛ぶ岩屋に入れられました。
しかし、スセリビメがくれた「ひれ」の力でやはり
ムカデと蜂を追い払うことができました。

鏑矢の試練

「どうもおかしい。あの若造、どこへ入れられても
平気なのか…?」

スサノオは面白くありません。そこでさらなる試練をオオアナムヂに与えます。
オオアナムヂをつれて野原に出て、

きりきりきりきりきり…

鏑矢をつがえてひきしぼり、ひょうと放ちます。

鏑矢とは矢先にかぶのような形をしたふくらみの部分があり、
中が空洞になって穴があいていて、放つと大きな音がします。
後には合戦のはじまりを告げる合図として使われるようになりました。

はるかに広がる草むらの中へすーーっと吸い込まれるように落ちる矢。
そこでスサノオは、

「あの矢を取ってまいれ」
「ええっ…こんな草ぼうぼうの中から!無茶ですよ」
「無茶でもやれ!!」

オオアナムヂは途方に暮れながらも草むらの中に入っていきます。

スサノオは、

「ふん若造。悪く思うなよ」

容赦なく草むらに火をつけます。

「ぎゃ、ぎゃあ!!」

背後から強い風にあおられた炎が刃の如く襲ってきます。
炎はどんどん燃え広がって、今にもオオアナムヂを
焼き尽くす勢いです。

「た、助けてくれーッ!!」

駆けだすオオアナムヂの足に「チチッ」といって
取りつくものがあります。見ると、ネズミです。

「なんじゃこんな時に!お前もあぶないぞ。早く逃げろ」

しかしネズミはオオアナムヂの脚に取りついてゆられながら、
さかんにチッチ言っています。

「ん?何か言いたいのか?」

するとネズミはチチッと駆け出し、
地面の一か所でくるくる回ったりぴょんぴょん飛んだりしています。
「ここです。ここです」と言っているようです。

「ぬう。俺を助けてくれるというのか。ならば助けてくれ!!」

地面のそのあたりに踏みこむと、ズボッと踏み抜いて、
オオアナムヂは人ひとりが入れるくらいの穴の中に落ち込みました。

炎はその上をゴーッと通り過ぎ、入口が狭いために
穴の中までは届かず、オオアナムヂは焼き殺されずに助かりました。

「ふーっ助かった」

緊張が解けたオオアナムヂが穴の中でぐったりしていると、
チチッとネズミが穴の中に飛び降りてきます。

一匹が降りたのに続いて、二匹三匹四匹と。
しかしよく見るとネズミたちは何かを口にくわえていました。

「あっ!」

ネズミたちがくわえていたのはスサノオが放った矢でした。
羽の部分はネズミがかじったと見えてぼろぼろになっていましたが、
間違いなく、スサノオの矢です。

ネズミたちはオオアナムヂに矢を差出します。

「お前たち、俺のために矢を届けてくれたのか…ありがとう!
しかしウサギだの貝だのネズミだの、
つくづく俺は小動物に助けられるなあ…」

≫つづき【根の国からの脱出】

解説:左大臣光永

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