黒鯛大名神

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むかしむかし、ある山奥の村に漁師が浜から魚を売りにきました。すると途中の山道で、キジが罠にかかってぐったりしていました。

見るとずいぶん美味しそうなので、取って羽をむしり、食べてしまいました。すっかり満腹になっていい気分です。

でもよく考えると人のものを盗んだわけで、申し訳なく思えてきました。

そこで漁師は売るためにもってきた黒鯛のうち三尾を罠のところに挟んでおきました。これなら泥棒したことにはならんだろうと、漁師は気持ちよく通り過ぎました。

後から来た村の人はこの黒鯛を見つけて、ビックリします。山に鯛がいること自体おかしなことなのに、それが罠にかかっている。ただごとじゃないと思いました。

村の寄り合いでこのことを話すと、村長さんはじめ、大騒ぎになります。占い師に占ってもらいますと、これは神さまがつかわした鯛だ、社を作ってまつりなさい、ということでした。

しかも鯛はめでたいことが好きだから、できるだけ派手に、ヤケクソに騒ぎまくるのがいいのだ、ということでした。

三つの社が作られ、黒鯛三所権現として祭られます。

黒鯛まつりの日は黒鯛まんじゅうや黒鯛人形の出店がズラッと並びます。やぐらの上では鯛のぼうしをかぶった男女が黒鯛音頭を踊り、そのまわりで輪になって、村中の男女が踊るのです。

また黒鯛大明神のゆらいをお芝居にして上演します。

さぁーーっと幕が上がると、「いよっ!」「待ってました!」と景気のいい村人たちのかけ声。

村の芝居ずきたちが頭に鯛のぼうしをかぶって、神様からつかわされる黒鯛大明神の芝居をするのです。

「黒鯛大明神、この下の村がふけいきで大変です。お前が行って、ワッと盛り上げなさい」
「まかせてください。私が来たからにはふけいきなんて言わせないです。年がら年じゅうお祭りです」

すると客席ではお酒があっちでもこっちでも開けられて、飲めや歌えの大騒ぎが始まります。

祭りの終わりには大きな鯛のはりぼてをかついで、たいまつの火をともしながら、家々の間を練り歩くのです。にぎやかなお囃子と太鼓の音は大地をゆるがし天に届くほど、鳴り響きました。

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それから何年かして、漁師はふたたびこの村を通りかかります。すると、ピーヒャラ、ドンドン、楽しげな祭りの音が。

「はて?この時期にお祭りなんてなかったはずだが…?」

なにか、どの家にも鯛の絵が飾ってあります。のぼりには「黒鯛大明神」でかでかと書いてあります。子供たちは鯛のお面をかぶってます。これはどうしたことかと、漁師は村人にたずねます。

村人によると、数年前山道にしかけてあった罠に鯛が三尾かかっていた。山に鯛がいるだけで不思議なのに、さらにそれが罠にかかっていた、ただごとじゃなかろうと占わせたところ、黒鯛大明神さまだという。

鯛はめでたいからできるだけ派手な祭りをするのがいい、それで黒鯛音頭や黒鯛饅頭、黒鯛大明神の由来を芝居にして上演したり…

聞いているうちに漁師は頭がクラクラしてきます。自分がしたことがたいへんな騒ぎになっていたのです。

その時ひゅるひゅるゅると花火が打ち上げられます。

ドーーン、人々を照らす花火。

黒鯛大明神さま、ばんざーい!
黒鯛大明神さま、ばんざーい!

老いも若きも、村じゅう、ばんざいの大合唱です。男はもおしゃあないので、一緒にばんざいしました。

解説:左大臣光永

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