かもとりごんべえ

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こんにちは。左大臣光永です。
すっかり温かくなってきましたね。
いかがお過ごしでしょうか?

数回にわたって新撰組の話をお届けしていますが、
今回は小休止として、昔話をお届けします。

昔話で特徴的なことに「三回繰り返しの法則」があります。
一回ですませればいいことを、わざわざ三回言うことです。

「桃太郎は米を食ってはぐんぐん育ち、
芋を食ってはぐんぐん育ち、大根食ってはぐんぐん育ち…」

↑これなんか、「なんでもよく食べてぐんぐん育った」と
まとめて言えばいいんですが、そこを、あえて三回
繰返す。これにより強く印象づけ、リズムが生まれ、
耳に気持ちよくなるわけです。

お子さんやお孫さんに昔話を読んであげる時も、
「三回繰り返しの法則」にぜひ注意して読んでみてください。

▼音声が再生されます▼

http://roudoku-data.sakura.ne.jp/mailvoice/kamotori.mp3

むかしむかし、あるところに、

鴨をとって暮らしている
ごんべえさんという男がいました。まわりの人からは、
「かもとりごんべえ」と呼ばれていました。

ごんべえさんは毎日2羽、3羽と地味に鴨を撃って
くらしをたてていたのですが、ある時考えます。

「こんな、1羽2羽マジメに捕まえてたって、
キリがないな。どうにかいっぺんに
100羽くらいガバーと捕まえられないもんかな。
それなら1日だけ働いてあと99日はゴロゴロしてられるわけだよ」

ロクでもない考えですが、怠けるためなら
いっしょうけんめい知恵をふりしぼるのが
ごんべえさんのスゴイところです。

ごんべえさんは湖に100の罠を仕掛けました。
つぎの朝早く行ってみると、水面にカモがたくさん浮かんでおり、
みんな罠にかかっていました。

「しめた」

数えたら99羽いました。100羽には1羽足らないですが、
これでしばらくゴロゴロして暮らせそうです。

ごんべえさんはワクワクして、
100の罠の反対側につないだ太い綱をたぐりよせました。

と、その時

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湖がパァッと明るくなります。
山の向こうからお日様がゆっくり上がってきました。

すると、99羽のカモはその光に驚いて、

グワッ、グワッ、グワッグワッ

と鳴き、バサバサとびたちます。

「うわっ、待てっ。オレのカモ」

ごんべえさんは慌てて綱を手繰り寄せますが、
なにしろ99羽のカモです。人間の力より強いのです。
どんどん引きずられていき、足が地面を離れ、
とうとうフワッと浮き上がります。

ごんべえさん、空へ

「うわー、たすけてくれー」

ごんべえさんは99羽のカモに引き上げられて
大空へ上がっていきます。下を見ると自分の村が
どんどん小さくなっていきます。

そして野を超え山を越え谷を超え、
どこまでも飛んでいきます。

そのうち手が疲れてきて、
綱のはしをパッと手放してしまいます。

「うわーー」

ごんべえさんは高い空からまっさかさま。
落ちたところはあわばたけの真ん中でした。

ちょうどお百姓さんがあわの刈り入れをしているところでした。
そこへごんべえさんが落ちてきて、
粟がメチャクチャになってしまいました。

「収穫でいそがしいのに!なんてことしてくれたんだ!」

おひゃくしょうさんはカンカンです。
ごんべえさんはぺこぺこ謝ります。
おわびにしばらくあわの収穫を手伝うことになりました。

こうしてごんべえさんは何日か粟畑で働いていたのですが…

ある日、ごんべえさんはとくべつ大きな粟の穂が
を見つけました。

「しめた、これを刈り取れば
一日の仕事ぶんくらいはあるぞ」

と、その粟にカマを入れます。

ところがその拍子にあわはビョーンと
バネのように飛び跳ねて、ごんべえさんは
ビューーッと空に飛ばされてしまいました。

ごんべえさん、ふたたび空へ

「うわーーっ、また飛ばされるんか」

ごんべえさんは野を超え山を越え谷を超え、
どこまでも飛ばされていきます。
そしてある町の傘屋さんの軒先にドシーーンとおっこちました。

たくさんの傘を並べて張替えをしているところに
ごんべえさんが落ちてきたので、
せっかく張り替えた傘がメチャクチャになってしまいました。

「商売でいそがしいのに!なんてことしてくれたんだ!」

傘屋のしゅじんはカンカンです。
ごんべえさんはぺこぺこ謝ります。
おわびにしばらく傘張りの仕事を手伝うことになりました。

沢山の傘を軒先に並べ、紙を張りなおし、油をぬります。
油が垂れないようにサッとハケを動かすのがコツです。
なかなか奥の深い仕事です。ごんべえさんはむちゅうで働きました。

「あんた、筋がええよ。このまま傘屋に転職したらどうかね」

主人が誉めるとごんべえさんは
「いや、そんな、俺なんて、いひひ」と、
しまりの無い笑いを浮かべるのでした。

すると、ビューーとすごい風が吹いてきて、
軒先の傘がコロコロコロコと転がっていきます。

「あっ、待て待て」

ごんべえさんは大慌てで傘を追います。たいへんな風です。ガシッと傘の柄をひっつかむと、
そのまま風にあおられてヒューーと大空に舞い上がります。

ごんべえさん、三度空へ

「わーー、また空か!」

もうわけがわかりません。つくづく自分は空に
縁のある男だと思います。ごんべえさんは傘につかまって
野を超え山を越え谷を超え、どこまでも飛んでいきます。

そのうち傘がバサッと裏返しになり、振り落とされます。

もうこの頃はごんべえさんもヤケクソでしたから
次にどこへ落ちるのか楽しむ余裕すら生まれておりました。

ストーン!

落ちたところはお寺の塔のてっぺんでした。
またえらい場所に落ちたものです。
はるか真下にお寺の境内が小さく見えます。

「こりゃまた大変なところに落ちたもんじゃ」

すぐにお寺の小坊主さんたちが
塔の上のごんべえさんに気づきます。

「まってろよー今助けてやる」

と、四人の小坊主さんが布団を持ち出してきて、
その四隅を持って広げます。

「さあ、ここに飛び降りてください!」

「ええーー…、そそ、そんなとこに跳ぶの?
ちょとずれたら死んじゃうよね?」

「大丈夫ですしっかり受け止めますから!」

「俺さ、なにやっても間が悪いんだよね。
またヒドイ目にあうんじゃないかな」

「そんな後ろ向きな考えはダメですよ。
ガツーンといかなきゃ!」
「やる前からあきらめるのはクズです」
「今逃げたら一生負け犬ですよ」

「好きなこと言ってやがんなぁ…」

とかなんとか言ってるうちにツルっと足が滑り、

「わーーっ」

ごんべえさんは最悪のタイミングで落ちてしまいました。

すぅーーーっ、どすん!

ごんべえさんは布団の真ん中に飛び込みました。
そのひょうしに布団を支えていた小坊主さんたちが跳ね上がり、

ゴチーーーン!

頭をぶつけます。その火花が飛び散って、
お寺に燃え移り、大火事になってしまいました。

「かもとりごんべえ」の昔話でした。

解説:左大臣光永

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