花咲か爺さん

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昔昔あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

ある日おばあさんが洗濯の帰りに山道を歩いていると、松の木の根元に白い子犬が捨ててありました。

くうんくうんとじゃれついてきて、いかにも「飼ってください」とすがるような目なので、おばあさんは見捨てることができず持って帰りました。

おじいさんとおばあさんは相談してこの犬にシロという名前をつけます。シロはうんと食べて大きくなります。手の平に乗るくらいの子犬だったのが、いつのまにか馬の弟みたいな大きさになりました。

ある日シロはおじいさんに「クワを持って背中に乗ってください」といいます。

「ええ、そんなことしたらシロお前つぶれちゃうぞ」
「大丈夫ですよ。さあ、遠慮なく乗ってください」

あんまりシロがすすめるので、おじいさんは何かあるのだろうとシロの背中に乗りました。

シロはおじいさんを乗せてどんどん歩いていきます。まるで馬です。いい気分です。裏の山をどんどん登っていきます。頂上につくと、シロは桑畑の真ん中でワンワンと鳴いて駆け回ります。

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「ここを掘れというんじゃなー、よし」

おじいさんがそこを掘ると…、大判小判がザクザク出てきました!

おじいさんとおばあさんは、シロよくやった、ありがとうありがとうと、シロをほめたたえます。それは一生の生活に困らないくらいの小判の山でした。

ところが、このことを隣の家のおじいさんおばあさんが聞きつけます。

「ほほー、あの犬ただものじゃないな。わしらも生活がラクになりたい」
「あんた、あの犬借りてきましょう」

こうして隣のおじいさんおばあさんは嫌がるシロに縄をかけて無理矢理裏の山までひっぱっていきます。

「さあシロ。わしらにもラクな生活をくれ」

ところがシロが行く先々、どこを掘っても宝は出ません。じいさんはイライラしてきました。

「こらシロ、ええ加減にせえよ。
今度小判が出んかったら、ヒドイ目にあわすで」

シロがまた渋々しめした場所をおじいさんは掘りました。ところが出てきたのはゴミや蛇、毒虫などロクでもないものばかり。じいさんはついにキレました。

「役に立たんバカ犬が」

と言って、シロをクワで叩き殺してしまいました。

さてシロを飼っていたほうのおじいさんおばあさんはシロのむざんな死体を見て泣き悲しみます。

こんなことをする隣のおじいさんおばあさんが許せませんでしたが、グッと怒りをこらえ、シロをほうむってやることにしました。

シロを地面にうめ、墓石にみたてた棒を立て、松の苗木を植えます。

次の日おじいさんがシロの墓を見にいくと、なんと、昨日植えたばかりの松の苗木がもう大木になっていました。

「これはどうしたことじゃ」

おじいさんおばいさんは、この松の木をシロの生まれ変わりと考え、たいへん大事にしました。毎日野良仕事のはじめとおわりにお供え物をしました。

ある日、キラキラ輝くこの世のものとは思えない鳥が飛んできてこの松の枝にとまります。そして言います。

「この木を切り倒して臼(うす)を作りなさい」

これを聞いておじいさんおばあさんはとまどいます。シロの生まれ変わりである松の木を切るなんて、とんでもない話です。でも、何日もこの鳥が飛んできて

「この木を切り倒して臼(うす)を作りなさい」

というので、これも神様のお告げだろうということで、感謝しながら切り倒しました。

おじいさんおばあさんは木を切り倒して臼をつくり、ぺったらぺったらモチをつきます。

すると、なんだかモチが金色に輝きはじめます。

その輝くモチをちぎって並べていくと、なんとひとつひとつが小判になりました。

「あんた!」
「小判じゃあー、シロは死んでもわしらを見守ってくれとるんじゃなぁ」

二人は死んだシロに感謝をささげるのでした。

ところが隣のおじいさんおばあさんが、このことを聞きつけました。

そしてまた無理矢理この臼を持っていきます。

「今度こそ生活の安定じゃ」
「もう不安な老後とはおさらばですね」

とかなんとか勝手なことを言いながらぺったんぺったんモチをつきます。

すると、モチからぷうんとイヤなニオイが漂ってきました。つまんでみると、やな手触りです。モチは牛や馬のうんこになっていたのです。

「うわっぷ、モチがクソになりよったわ。こらばばっちい」

おじいさんおばあさんは怒り狂います。臼に火をつけて、灰になるまで燃やしつくします。

シロを飼っていたほうのおじいさんおばあさんは、灰をつき返されて呆然とします。いくら何でもヒドイ。あんまりだ。人間の心はないのか。怒りがこみ上げます。

その上隣のじいさんは全く役に立たんバカ犬がとシロのことをののしります。ひどい。あんな奴は生きていてはいけない。殺してやるとおじいさんは思いました。

そこへぴゅーと風が吹いてきて、灰がさーっと流されます。「あっ」一瞬で灰はそこらじゅうに撒き散らされます。

すると、そこらの枯れ木に、ぱっぱっと桜の花が咲きます。灰が流れるたびに花が咲き、またたく間に桜の花でいっぱいになります。

冬だというのにあたり一面、花ざかりです。そのめでたい様子を見ているとシロが生き返ったようでおじいさんは嬉しくなりました。シロがくれたこの喜びをみんなに広めようと決心しました。

おじいさんは街へ出て、「日本一の花咲か爺」と名乗っては灰をまいて花を咲かせ、みんなに喜ばれます。最初は恥ずかしかったですが、だんだん気分が乗ってきて決めポーズや衣装、セリフなども工夫しました。

この噂がお代官さまの耳に届きます。おじいさんはお代官さまの前で灰をまくことになりました。緊張します。たくさんの人が見物に来てます。身分の高い人も多いです。ここ一番の勝負どころです。おばあさんもすみでハラハラ見守ってます。

「寄ってらっしゃい見てらっしゃい
日本一の花咲か爺
はためく袖もあざやかに
なびく白髪もたおやかに
見るもめでたき陣羽織
枯れ木に花を咲かせましょう
枯れ木に花を咲かせましょう」

と言ってパッパッと灰をまきます。

するとあたり一面花盛りになり、お代官さまは大喜び。

「この者に褒美をとらせよ」

と、たくさんのお宝をいただきます。

ところがそこへ隣のおじいさんが走ってきます。

「待った!わしこそが日本一の花咲か爺」

「何ッ、花咲か爺がもう一人いるだと?」

「もう一人というか、わしこそが本物!ごらんあれ。やっ」

と言って、隣のじいさんは灰をめちゃくちゃにまき散らします。でもその灰はなんのことはない、ただの灰でしたからあたりを汚しただけです。その上殿様の顔にブワッとふきかかりました。

「無礼者!こやつをひっとらえろ!」

こうして隣のじいさんは捕まって、死ぬまで牢屋に入れられたということです。

解説:左大臣光永

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