俵藤太秀郷の大ムカデ退治

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ここは近江の国、瀬田の唐橋。
古くから交通の要として用いられた、大切な橋です。

「困ったのう…」
「わしは明日までに京都に着きたいんじゃが…」
「どうすりゃええんじゃ…」

旅人たちは瀬田橋を前に何日も足止めされていました。

俵藤太秀郷の大ムカデ退治
【俵藤太秀郷の大ムカデ退治】

しゃーーっ、しゃーーっ

瀬田橋の真ん中に、60メートルもあろうかと見える大蛇が横たわっていたのです。危なっかしくて、脇を通り抜けることなどできません。

頭をかかえる旅人たち。
そこへ、

「どけどけ」

一人の武士が歩いてきました。

「ああっ!」「おお!」

周囲が驚く中、武士は
大蛇の上に踏みあがり、

ぶにゅん、ぶにゅん、ぶにゅん、ぶにゅん、シュタッ

武士は大蛇を踏み越え、踏み越え、向こう側に降り立ち、
おお、ああと驚く旅人たちのほうを振り返って、言います。

「たかが蛇くらいでわあわあ騒ぎやがって
近江の男は情けないのう」

「な、なんやて!」

「わしの名は藤原秀郷。用があったらいつでも頼ってこいや。ガハハ」

秀郷は高笑いしながら、ゆうゆうと橋を渡っていきました。

瀬田の唐橋
瀬田の唐橋

瀬田の唐橋
瀬田の唐橋

その夜、秀郷が宿で泊まっていると、

ととととん

「ん?なんじゃこんな夜更けに」

からっ

戸を開けると、きれいな娘さんが立っています。

「はて、こんなきれいな娘さんに知り合いはいないが…。そのほう、何か用であるか」

「秀郷さま、私は、昼間の大蛇です。その正体は、琵琶湖の底にすむ竜神一族の娘です。秀郷さま、あなたのような勇敢なお方を待っておりました。お願いです。どうか、三上山の大ムカデを退治してください」

「三上山の大ムカデ?それはいったい…?」

「山を七巻きもする怪物です。ふもとの村々が襲われて村人たちがそれはもう、困っています」

「ほほう。それは面白そう…あいや、大変ですな
民の暮らしを脅かす。けしからん怪物です。よろしい私が退治してやりましょう」

次の日、秀郷は得意の弓をたずさえて、三上山へ向かいます。三上山のふもとでじいっと山をにらまえて待つこと二時間。「まだか…」その時、急に空が曇り、ぐわら、ぐわらと大地がゆれはじめます。

「来たかっ!」

俵藤太秀郷の大ムカデ退治
【俵藤太秀郷の大ムカデ退治】

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三上山の一角が、ぬうーとふくれあがったかと思うと、それは山の一角ではなく、あらわれた大ムカデの頭でした。大ムカデは、ガシャガシャ、ガシャガシャと、やな音を立てながら、三上山を取り巻くように、その姿をあらわしました。

「覚悟しろ大ムカデ」

秀郷は一の矢をかまえ、きりきりきりと引き絞り、ひょうううっと放つと、その矢は、ゆるやかに弧を描きながら飛んでいき、大ムカデの表面にカーーンと当たって、はじき返されました。

「簡単にはいかぬか。では!」

続いて、二の矢、三の矢、ひょうひょうと連射します。しかしいずれも、カーン、カーンとはじき返されているうちに、大ムカデもいい加減本気を出してきたのか

ギャウウウウ

と一声、秀郷のほうに頭からつっこんできます。

「ぐわっ!!」

とっさに横へ飛びのく秀郷。大ムカデの頭はズボーーと地面につきささり、大量の土砂をまきちらしながら、秀郷のほうに向き直り、

ギャオオオン

その長いしっぽで、秀郷をぐるぐる巻きにしてしまいます。

「ぐわああっぷ」

じたばた、じたばた。

もがき苦しむ秀郷。

目の前には、大ムカデの真っ赤な、巨大な、二つの目が迫り、秀郷は手足の動きを封じられ、得意の弓も持てず、しかし、

「負けられぬ!!」

秀郷は思いっきりのけぞらせた上半身を反動でぶうんと前に振り出し、勢いのままにムカデの眉間に強烈な頭突きを一発。

「ギャウウウウウ」

続いて二発。

「ギャヒャアアアア」

のけぞる大ムカデ。秀郷の体をしめつけていた大ムカデの締め付けが弱まり、秀郷は地面に振り落とされます。

「ぐはっ」

そこへ、怒りに燃えた大ムカデが、ぶうんと尻尾を大きく振り上げ、振り下ろし、

ズガーン
「うおっ」

とっさに避けた秀郷は、弓矢を取り出し、矢の先をつばにしめらせて、きりきりきりきと渾身の力をこめて引き絞り、祈ります。

「南無八幡大菩薩。この矢にかけます。当たらせてくだされ」

ひょうーーー!!

飛んでいった矢が、大ムカデの眉間に、

ふつーーーっ

思いっきり突き刺さり、

ギャヒャアアアアーー!!

大ムカデは後に、前に大きくよろめいてから、

ばたーどさどさどさどさー

盛大に倒れました。ビクッ、ビクッ…二三度のたうってから、動かなくなりました。あたりは何事もなかったように静まり返り、小高い丘のような大ムカデの死体が残されました。

「秀郷さま、よく退治してくれました。ありがとうございます。これはお礼のしるしです」

龍神の娘はお礼のしるしに秀郷に米が尽きない米俵、切っても減らない反物、食べ物があふれてくる鍋、美しい音色の釣鐘などを、贈りました。

この釣鐘は後に大津の三井寺に奉納され、現在でも三井の晩鐘として美しい音を鳴り響かせています。

竜神の娘からもらった米が尽きない米俵にちなんで、秀郷は俵藤太秀郷と呼ばれるようになりました。後に関東で反乱を起した平将門を討ち取ったのが、この俵藤太秀郷です。

解説:左大臣光永

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