安倍晴明と信田妻伝説

こんちには。左大臣光永です。
日に日に暑くなり、外でジュースだ水だと飲んでいると
アッという間に財布の中身が減る季節ですが
いかがお過ごしでしょうか?

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この商品に関連して、しばらく
平安時代の出来事や伝説、説話についてお話していきます。

本日は「安倍晴明と信田妻伝説」です。


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信田妻伝説

村上天皇の時代、摂津国安倍野(大阪府大阪市阿倍野区)に
阿部保名(あべのやすな)という男がありました。

貧しい暮らしをしていましたが、
父の代に没落した家を再興するため、
毎日信太森の葛葉稲荷にお参りしていました。

その日も阿部保名がお参りしていると、

ガサガサッ、ガサガサッ…

草むらから、何か白いものが現れます。

「ん?…おお!」

それは、傷を負った白狐でした。
すっかり憔悴しきっています。

「むごいことじゃ。今手当してやるからな」

安倍保名は狐を手当して逃がしてやりました。
そこへ狩り人たちがあらわれます。

「ここに狐が来なかったか」
「ああ、それでしたら傷を負ってたので手当して、
逃がしてやりました」
「なに!俺たちの獲物に、余計なことしやがって」

ガーーーン

いきなり殴られ、阿部保名は頭がクラクラして
バッタリその場に倒ると、
倒れた保名に男たちは容赦なく殴る蹴るの暴行を加えるので
保名の意識は遠のいていきました。

「もし、もし、しっかりなさいまし」

「う…ううーーん」

安倍が目をさますと、美しい娘さんが、
保名を心配そうに覗きこんでいます。

「よかった。目が覚めたんですね。
しっかりなさってください」

「あ…あんたは」

「葛の葉と申します。さ、つかまってください」

葛の葉は安倍保名の体をささえ、家まで運ぶと
かいがいしく看病してくれます。

その後も何度か葛の葉は訪ねて来て、
身の回りの世話をしてくれました。

いつしか二人は仲よくなり、夫婦となり、
一人の男の子が生まれます。

童子丸(どうじまる)と名付けました。

子供ながら凛として、みだりに泣くことはなく、
どこか世間並ではない、神々しさが漂っていました。

童子丸が五歳の時、葛の葉は庭に咲く菊の花を眺めていました。

「まあ、なんて美しいのかしら…」

ぼうっと見とれているうちに、葛の葉はつい正体を隠すことを忘れ、
大きなしっぽを現してしまいます。

「おっ母、それ…」

「えっ…えっ…ああっ!」

正体を見られたからには、もうここにはいられない。
信田の森に帰らなくては。葛の葉狐は泣く泣く口に筆をくわえ、
障子に歌を書き記しました。

恋しくば 訪ね来てみよ 和泉なる
信田の森の うらみ葛の葉

「なんということだ。
葛の葉は、あの時の、狐だったのか!!」

夫安倍保名は、息子童子丸とともに、歌の導きにしたがって
信田の森を訪ねていきます。

うっそうたる獣道を進んでいき、森の奥まで至った時、
後ろに気配がすると思い振り返ると、
一匹の白狐が、目に涙をためてじいっとこっちを見ていました。

「お前かい、葛の葉かい」

「はい。葛の葉です。今まで、本当に幸せでした。
でも私は人外の者。やがて人間であった時の記憶も消えてしまうでしょう。
どうか、童子丸を立派に育てて…」

「お、お、お前!」

「母上」

「これを、母の形見に持っておいき」

泣きすがる息子・童子丸に、母は水晶のような白い玉を与えました。
そして最後の名残を惜しみつつ、葛の葉はくさむらの中に駆け入り、
二度と姿をあらわすことは、ありませんでした。

この童子こそ、後の陰陽師・阿部晴明と伝えられています。

病の原因

こんな話が伝わっています。

安倍晴明が子供時代、まだ童子丸と呼ばれていたころ、
晴明は蛇を助けて竜宮城へ行ったり、
鳥の声を聴くことができたり、いろいろ不思議な能力がありました。

ある晩、夢の中に、苦しんでいる貴人の姿があらわれます。

「うう~ん…うう~ん…」

「あの御方は、もしや帝では。
あのう、どうなさいました」

「頭が、頭が割れそうなのじゃあ」

そこで画面がすーーーっと移って、
蛇と蛙がにらみ合っている姿が見えたところで、
目が覚めました。

晴明は父安倍保名に話します。

「帝の御病気の原因はあきらかです。
去年造営した寝殿の、丑寅の柱。その礎の下で、
蛇と蛙が取りこめられているのです。
蛇は蛙を飲み込もうとして、蛙は飲み込まれまいと、
双方力んでいます。それが、帝の御病気を引き起こしているのです」

ふつうならバカな話と一笑にふす所ですが、
父安倍保名は晴明が不思議な能力を発揮するところを何度も
見ていますので、これを天皇に奏上します。

「すぐに掘り返せ」

寝殿の柱の礎の下を掘ったところ、
さましく蛇とカエルが飛び出しました。

以後、天皇の病は回復に向かったので天皇は晴明に
「さらなる祈祷をせよ」と命じられました。

というわけで、

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「語り」による「聴く」日本の歴史。
文字で読むとは比べものにならないくらい、
すーーっと頭に知識がしみこみます。

生涯学習の一環として、またお子さんやお孫さんに
歴史に興味を持たせる入口としてもどうぞ。
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本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。

解説:左大臣光永
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