神功皇后(二) 忍熊王《オシクマノミコ》の叛乱

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こうして新羅遠征を終えて瀬戸内海を通ってオキナガタラシヒメ(皇后)の船団は大和へ戻ってきました。しかし都に不穏な空気があるとの報告を受け、「ううむ。油断がならない」とオキナガタラシヒメは、一計を案じられました。

葬送のための船を用意し、御子をその船に乗せ、
「すでに太子は崩御された」という噂を流しました。

「なに太子が崩御した」
「今こそ我等立ち上がる時」

すぐに引っかかった者がありました。太子の腹違いの兄、
香坂王《カグサカノミコ》と忍熊王《オシクマノミコ》が
太子が崩御したという噂をきいて、皇后を捕らえようと斗賀野(大阪市北区兎我野町付近)まで出てきて、まず事の吉凶を占うための狩(うけい狩)を行います。

「よーし、うまくいってくれよ…運命がかかってるんだからな」

などと言いつつ香坂王はクヌギの木に登りあたりを見渡すと、
ぶひい、ぶひいと大きな猪が突進してきて、バスーーンとクヌギの木に
つきあたり、うわあああ、どさっ。

木から落ちた香坂王は無残。猪にさんざんに、
食い殺されてしまいます。

こうして誓約(うけい)は凶、と出たわけですが、弟の忍熊王は、そんなことではひるみませんでした。

「ふん。兄上は、たまたま運が悪かっただけだ。
こんな運命など、くつがえせる」

ワアァーー、ワアアァーー、

忍熊王の軍勢は、陸地から矢を射かけます。
岸に停泊していた喪船は無視して、沖の戦船に矢をあびせかけます。

「それっ、敵はひるんでいるぞーーっ」

その時、

バカッ

喪船の戸が開いて、ワアァー、ワアアーーとたくさんの兵士が躍り出てきました。

「なにっ、喪船のほうから兵が!
は、はかられたっ」

まんまと皇后方のはかりごとにはめられ不意をつかれた忍熊王の軍勢。

そこへ、容赦なく皇后方が斬りかかります。

キン、カン、カキーン

両者入り乱れ、激しい大混戦となります。この時
忍熊王方の大将は伊佐比宿禰《いさひのすくね》、
皇后方の大将を建振熊命《たけふるくまのみこと》。

太子方は勢いに任せ、忍熊王を山城まで追い立てていきます。

しかし、

「負けられぬ。射返せ。射返せ」

ワァーー、ワァーー

忍熊王方もさんざんに抵抗し、攻め返します。

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そこで皇后方の将軍建振熊命《たけふるくまのみこと》は
考えます。

「このまま戦っていては、いたずらに味方が
損耗するばかり。ここは、計略で切り抜けよう」

建振熊命は敵方に間者を放ち、
「オキナガタラシヒメ(皇后)はすでに崩御された。
なのでこれ以上戦う必要は無い」

というデマを流します。そして弓の弦を切って、降参するふりをしました。

「そうかそうか。降参するか。懸命な判断といえよう。
悪いようにはしない。兵士たちの安全は保障しよう」

などと忍熊王方の将軍が安心しきって武器を収めたところで、
建振熊命は、もとどりの中にかねて用意していた別の弦を
すばやく弓に張ってきりきりきりと引き絞り、
ひょうひょうと矢を放つと、

敵が降参してきたと思っていた忍熊王方は、
「ぬう、卑怯な!」不意をつかれて、逢坂まで逃げ退きます。

キン、カン、キン
ワァーー、ワァーー

逢坂で、再度、大混戦となりますが、皇后方が
しだいに忍熊王方を圧していき、
ついに沙々那美の地に忍熊王方をやぶり、
ことごとくその軍勢を斬り殺しました。

敗れた忍熊王《おしくまのみこ》は将軍伊佐比宿禰《いさひのすくね》と共に
攻め立てられ、命からがら船に乗り海に浮かび、歌って言うことに、

いざ吾君《あぎ》 振熊《ふるくま》が
痛手《いたて》負はずは 鳰鳥《におどり》の
淡海《おうみ》の海に 潜《かづ》きせなわ

なあ、わが将軍よ、敵将の振熊という奴にひどい
痛手を負わせられるくらいなら、カイツブリのように琵琶湖に飛び込もうじゃないか

「わが君…」

こうして
忍熊王《おしくまのみこ》は将軍伊佐比宿禰《いさのすくね》と
手を取り合い、ざんぶと琵琶湖に身を投げました。

≫つづき 「気比神宮」

解説:左大臣光永

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