安康天皇(三) オシハノミコの災難

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その後、近江の、名を韓袋というという者が
オオハツセノミコに申し上げました。

「近江の久多綿(くたわた。滋賀県蒲生郡)の
蚊屋野(かやの)には、立派な鹿がおります。
その足も角も見事なものです」

「ほう、それほどの鹿がいるのか」

そこでオオハツセノミコは従兄弟のオシハノミコ(忍歯王)を連れて
近江にお出かけになり、それぞれ別に仮の宮を作って
その夜はお休みになりました。

翌朝。

さわやかな朝の空気の中、オシハノミコは馬にまたがって、
オオハツセノミコの仮の宮のところまで来て、
表に立っているお供の人に言いました。

「まだお目覚めにならないのか。早く申し上げよ。
夜はもう明けたと。早く狩場においでませと」

そして馬を進めて戻っていきました。

オオハツセノミコのお供の者がオオハツセノミコに報告します。

「いやなことを言う王子(みこ)です。ご用心ください。
謀反かもしれません。守りを固めておきませんと…」

「なにい。朝っぱらから謀反とは胸くそ悪い」

すぐにオオハツセノミコは衣の下に鎧をまとい
弓矢を取り佩いて馬に乗って

バカラッ、バラカッ、バカラッ、バカラッ

「おーーーい」

後ろから声がしたので

「ん?」

オシハノミコは馬上で振り返ると、オオハツセノミコが
全速力で馬に乗って駆けてきます。

「ようやくお目覚めですかあ」

などとのんびりした感じで見ていると、オオハツセノミコは
馬をならべ、いきなり弓矢を取って狙いを定めて引き絞り、

「な!」

オシハノミコが声を上げるすきも与えず

ひょう

ずぶうう…

「ぎゃあああ」

どたーー

地面に射落とされます。

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そこへ、

バッ

馬から飛び降りたオオハツセノミコが
オシハノミコに馬乗りになり、

ズバッ、ズバッ、ズバアア

全身を、むちゃくちゃに、
切り刻み、死体は馬の飼葉桶に入れて、
人に気づかれないように地面に埋めました。

「なんと、父上が殺された?」
「えっ、父上が!!」

報告を受けたオシハノミコの二人の御子、
オケノミコ(意祁王)・ヲケノミコ(袁祁王)は
逃げ去ります。

そして山城の刈羽井(かりはい)に至り、
ううっ、これからどうなっていくんでしょう兄上。
弟よ、とにかく今は食べて、体力をつけないと
などと、二人で隠れ、食料を食べていました。

そこへ物陰から、あやしげな爺さんが現れ、
二人が食べていた食料をバッと取り上げ、

「もーらった、もーらった。これ、わしのもん」

と踊りはしゃぎ、ガツガツと食べるのでした。

「なっ…なんなんだお前は」

老人は盗んだ食料をむしゃむしゃと食べ終えると、

「ワシは朝廷の山城国の豚飼いよ」
老人はそう言って、ひゅんと逃げ去りました。

「うう…わずかな食料すら、奪われてしまった」

兄弟はひもじさに腹をぐきゅるるると鳴らしながらも、
手に手をとりあい、玖須婆之河(くすばのかわ)を渡り
山城から河内へ抜けさらに播磨に至ります。

そしてシジム(志自牟)という者の家で
馬飼・牛飼に身をやつして隠れました。

こうしてオケとヲケの兄弟は、
毎日真っ黒になって働きながらも、朝に夕に、

「オオハツセ…父の敵。
必ず、我ら兄弟が、お前を玉座から引きずりおろしてくれようぞ」

「そして必ず、
ズダズダに切り殺してくれようぞ」

大和の方角をにらみつけては、復讐心を新たにするのでした。

≫つづき【雄略天皇(一)ワカクサカベノミコへの求婚】

解説:左大臣光永

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