安康天皇(一) オオクサカの殺害とマヨワの復讐

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オオクサカの殺害

安康天皇(穴穂御子)は、石上(いそのかみ)の穴穂宮で天下を治められました。
現在の奈良県天理市田町と見られています。

天皇の感心は弟のオオハツセノミコ(大長谷御子)に
結婚相手を見つけてやることでした。

弟のオオハツセノミコはまだ少年でしたが、
兄は、こういうことは早いほうがいいと、
息巻いていたのでした。

ある時天皇は、オオクサカノミコ(大日下王)の妹の
ワカクサカノミコ(若日下王)が、たいそう気立てがよく
美人だという評判を耳にします。

あの仁徳天皇とクロヒメとの間に生まれた兄妹です。

「それだ!」

ただちに天皇は臣下の根臣(ねのおみ)を、
オオクサカノミコ(大日下王)のもとに遣わし、
「あなたの妹、ワカクサカノミコ(若日下王)は、
たいそう気立てがよく、美人だと評判です。

そこで天皇はご所望なのです。
いえ、天皇ご自身が、ではございません。天皇の弟君、
オオハツセノミコのお相手として、です。
弟君はまだ少年ですが、けして悪い話ではありません。
ただちに妹を差し出しなさい」

「なんと妹を天皇の弟君に!
これほど嬉しい話はありません。
すぐに妹を差し上げましょう。
言葉だけでは無礼にあたりますので、
とりあえず今日はこれを献上したします」

兄オオクサカノミコは、根臣に差し出しました。
木の枝の飾り物のついた立派な冠を。

「では、たしかに…」

ごそごそと根臣は冠をふところに入れ、
オオクサカの家を後にしますが、

「ふふふ。いい品だな。これは俺がもらっておこう」

根臣は、預けられた冠を
そのまま自分のものにしてしまいました。

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天皇への報告

「それで、どうであったか。オオクサカの返事は。
まさか断ることはあるまい」

「それが…」

根臣は声をひそめ、こんなことを言うのは
恐れ多いことなんですがと断って、言いました。

「オオクサカは太刀の柄をにぎりしめ、
わが妹を同格の者の下に敷かせてなるものかと、
怒りに声をふるわせました」

「なんと…!!そのような言い草であったか」

「怒りに、わなわなと震えながら」

「ぐぬう。オオクサカ許すまじ。
思い知らせてくれよう」

天皇はすぐにオオクサカの館に軍勢を送り包囲し、
オオクサカを討ち取ると、その妻ナガタノオオイラツメ(長田大郎女)を
うばって強引に后としました。

マヨワの復讐

その後、天皇は夢占いをする床の中で皇后ナガタノオオイラツメと共に
昼寝をしておられました。

昼寝しながら手をにぎりあい、「お前、なにか心配事でもないかい」
「そんな、何もありませんわ。とても今私、幸せです」
などと言い合っておられました。

ところでこの皇后と、皇后の前の夫(オオクサカ)
との間に生まれた子を
マヨワノミコ(目弱王)といい、この時七歳になっていました。

この日、マヨワノミコは天皇・皇后が昼寝していらっしゃる
建物の床下で、遊んでいました。

すると、床の上から声がきこえてきます。

「あれは…父の声だ。なにをお話なのだろう。
ずいぶん心配そうな感じだなあ」

じっと天皇の言葉に聞き入るマヨワノミコ。
その耳に、とびこんできた会話とは!

「わしには長年にわたる心配が一つあるのだ。
ほかでもない。マヨワノミコのことだ。
あの子の父を殺したの私だ。あの子はそれを知らん。
もし本当のことを知ったら、
あの子は恨みに思って私を殺すのではないだろうか…」

はっとするマヨワノミコ。

まさか、天皇が実の父ではない。
しかも、実の父は、天皇が殺した。

ぐるぐる、ぐるぐる

頭の中が混乱し、何が何だか、わからなくなります。

しかし、子供心に考えてみると、思い当たることがあったのでした。
父の、冷たさ。自分を避けるような態度。
時々、ぞっとするものを見るような、恐れているような目で
自分を見る、あの目つき。

そうか。そうであったのか。わが父は
天皇に殺されたのだ。天皇は、私をあざむいていたのだ。

驚きの次は、しだいに怒りがこみ上げてきます。

「天皇、許すまじ」

マヨワノミコはその夜、
太刀をはいて天皇の御寝所にしのびこみ、
すーすーと気持ちよく寝息を立てていらっしゃる天皇を
見下ろすと、チャッと太刀を抜き、

「でやっ」

「ぐ、ぶぶっ」

一息に天皇を刺し殺すとその首を斬り、
臣下のツブラオミ(都夫良意美)の家に逃げ込みました。

この天皇は御年56歳。
御陵は菅原の伏見岡にあります。

奈良市宝来町の
菅原伏見西陵(すがわらのふしみのにしのみささぎ)
と見られています。

≫つづき【安康天皇(二) マヨワ殲滅戦】

解説:左大臣光永

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